土平窯(藤ノ木土平)
  私が藤ノ木土平さんを知ったのは、今から20年近く前の佐賀滞在時、唐津焼に造詣の深い田中稔佐賀銀行頭取(当時)と話していて、「今、誰がいいですか」と聞いたところ返ってきた答えが土平さんだった。唐津市街から30分ほど半島に入った窯におじゃましたが、なかなかたどりつけなかった。土平窯は地図にない場所にある。陶芸家は人里離れたがるが、当ギャラリーでお付き合いいただいている中で、最も極端は土平窯と作礼窯である。
 土平さんは、新潟の出身で、最初は東京で絵の勉強をしていた。焼き物に魅せられ、九州を旅するうち唐津に落ち着いたという経歴。古唐津の伝統を大切にしながらも、作風はおおらかで自由である。唐津焼に限らず、いわゆる茶陶の世界では何をよしとするかについて暗黙の基準が設定されているように思う。しかし、それは言わば業界が便宜的に作りあげた基準である。本来の創造的な造形を評価する基準とは異なる部分もある。
 土平さんの気さくな人柄もあり、作品はおそらく昔の古唐津はこうであったと思わせる雰囲気がある。窮屈さ、重苦しさがなく、自然である。価格も手ごろで、唐津焼を見直せます。
 今回、窯をお訪ねしたら、息子さんが一緒に作陶、お弟子さんも2人いて、山の中がにぎやかになっていた。 最近は作品に文字を描きたいという。   (2007.10)

 
   
藤ノ木土平さんインタビュー 
2020年2月、東京・新宿の展覧会に出品されたおり、お話をうかがいました。 
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