小石原焼・鬼丸豊喜
  福岡県の大分寄り、大分自動車道杷木インターから約30分登り、霊山、英彦(ひこ)山の麓に小石原があります。集落内には、茶陶の高取焼の窯もありますが、小石原焼は、少し離れた小鹿田(おんだ)焼に似て、甕、皿、鉢、碗など、生活雑器類を主とする民陶です。飛び鉋(かんな)、刷毛目(はけめ)などの、独特の装飾、文様はごらんになったことがあるでしょう。ほとんどの窯元は、伝統技法で、製作を続けており、そのことが小石原焼に素朴さとともに他にない品格を与えているように思われます。
  小石原集落の街道沿いに「道の駅小石原」という施設があり、そこに約50の窯元作品が一堂に陳列してあります。私はそれをすべて見せていただき、実際に訪ね、結果として1軒を選ばせていただきました。それが、当ギャラリーでお付き合いいただいている、鬼丸豊喜さんです。鬼丸さんは昭和35年、小石原の生まれですが、生家の家業は焼き物ではありません。なぜ焼き物を始めたかと聞くと、「ここでは他に仕事がありません」と正直に答えてくれました。作陶姿勢は、「昔のまま行きたい」とのこと。コーヒーカップや傘立てなど、作品のバラエティは広がっていますが、「刷毛目と飛び鉋が入らないものはやらないようにしている」と、かたくなまでに伝統に忠実です。
  とは言え、鬼丸さんの作品には、形にも文様、色合いにも都会生活ともマッチする機能性、感覚が備わっています。現代に生きる伝統です。価格も手ごろで、鬼丸作品で小石原の伝統を見直していただければ幸 いです。
 
 2015年2月入荷