宮尾正隆
  宮尾正隆氏は、2004年の3月までは佐賀大学の教授だった。教鞭をとるかたわら日展に毎年出品し、28回入選されたとのこと。窯は佐賀市内にあり、肩書きも先生なので肥前の陶芸家としては独自の行き方で、あまり目立たなかったといってよい。しかし、僭越な表現だが、隠れていた大家のようだ。
  作品は白磁であるが、通常見かけるものとは趣がかなり異なる。白磁と言えば、その輝き、硬質の緊張感などが、美の要素とみなされているのではないだろうか。宮尾氏のそれは、色も純白ではなく、やわらかく、温かみがある。氏は、「土と磁器の中間のものを作ろうと思っている」という。
 その秘訣はひとつは釉薬にある。氏は元々釉薬の専門家で、研究を重ねてきた。粉砕から調合まで全部自分で行い、微妙な色合いを作りだす。もう一つは、ロクロでヘラなど道具を使わず、指で成型をする。 さらにあげれば、そのお人柄であろう。自ら設計した工房の2階は、外国人旅行者などのための宿泊所とのこと。人に対する思いやり、寛大さが、作品ににじみ出る。
  日本ではほとんどみかけない、深みのある白磁である。このような作品を今までは、展覧会のためにか制作しなかった。退官を機に日常食器なども作り、販売されるとのことで、当ギャラリーにも小物だけですが、何点か置かせていただきます。