伝平窯
  私はもう20年ほど前になるが佐賀滞在時、武雄から有田に向かう街道沿いの小高い丘の上にある、有田焼工業協同組合を訪ねたことがある。小規模のメーカーが集まって共同で窯を使用する施設である。そこは、有田焼という響きからはほど遠い、殺伐とした町工場であった。自らはブランドはもたず、販路は産地商社に依存し、厳しい環境下でものづくりに専念する産地の実態が凝縮されていた。
 一昨年になるが、有田の町中の店で、しゃれた染付けの皿を見つけ、購入した。店の人に聞くと「伝平窯」という。住所を調べ、今回訪問すると、あの有田焼工業組合であった。20年前と同じ風景。展示場は寒々とし、鍵がかかっていた。事務所に一人いた女性に開けてもらい、伝平窯を問い合わせると、電話をしてくれて、対応してくれるとのこと。工場内の同社区画の部屋で製品を見せていただいた。
 おこがましい言い方だが、廃墟の中で宝物を見つける感覚である。やはり染め付けに、他にない見るものがあった。
 商社を通す販売であるため、当ギャラリーの直接取引きは現状では困難で、今回は見本として何点か購入させていただいた。